防火設備点検とは

1:防火設備点検とは?

防火設備点検とは、2016年にスタートした制度で防火設備を設置している建物について、建築基準法に基づいた検査をして報告するという制度です。この制度は、ある診療所で大規模火災が発生して多くの死傷者を出したという事件がきっかけとなっています。診療所は防火設備の状態が悪かったり、そもそも建築確認の段階で法令違反があったことで、大きな被害につながってしまったという事情があります。こうした事態を防ぐために、定期的に検査をして建物に設置されている防火設備が適法であるか、しっかりと稼働する状態にあるかをチェックするために制度が設けられたのです。

この防火設備点検の対象となる建物は、特定建築物に指定される建築物です。特定建築物というのは、劇場や博物館、病院やホテルといった大勢の人々が使用する施設のことで、公共性の高い建物を指します。具体的にどの種類の建物が特定建築物になるかは自治体によって異なりますので、管轄の自治体で確認する必要があります。また、特定建築物でなくても、病院や診療所、介護施設などについては、一定以上の面積を持つ場合、やはり防火設備点検の対象となります。

2:防火設備点検で調査する内容

防火設備点検で調査する防火設備は、4つに分類されています。防火扉や防火シャッターがそれに含まれ、それぞれの区画を分けたり出入り口を延焼から防ぐために使われる設備です。問題なく開閉できるか、火災時に耐火性能を発揮できるか、そもそも法律上必要な場所に設置されているかを見ます。また、耐火クロススクリーンと、ドレンチャー、スプリンクラーなどの設備も点検項目に入っています。万が一火災が生じた時に、正しく機能して被害を抑えられるか、そもそも図面通りに設置されているかなどの点検を行います。

具体的な点検内容としては、防火扉や防火シャッターなどは、実際に作動させて全閉鎖できるかを見ます。関連する感知器も正常に稼働して、シャッターなどと連携が取れているかをチェックしなければなりません。また、防火扉の周囲に障害物などがないかを目視でチェックして、火災時に問題なく作動して避難経路を確保できるかを調べます。

こうした防火設備点検は、毎年1回行うことが求められます。どの時期に点検を実施するかなどは自治体によって異なりますので、事前に調べておきましょう。こうした点検は、防火設備検査員か一級もしくは二級建築士が実施することが求められます。建築物のオーナーや管理者は、こうした資格を持つ人に依頼して検査をしてもらい、報告書を受け取ります。報告書は特定行政庁へ提出して報告を行います。特定行政庁が書類をチェックして、報告書の副本が届けられると完了となります。

3:防火設備点検を確実に行いリスクを減らす

多くの人が利用する施設において、火災への備えをすることは人の命に関わる重要な作業です。所有者もしくは管理者の義務となりますので、確実に防火設備点検の頻度を守って実施しましょう。そして、日頃より防火設備が正しく機能するよう備えをしたり、周辺スペースの確保をしておくことも忘れないようにしましょう。