建物の構造にはいくつもの種類があって、それぞれに異なる特徴があります。使用されることが多い構造の一つに「トラス構造」があります。具体的にどんな特徴を持つのか、どんなメリットとデメリットが存在するのかを考察します。それにより、どんな建物に向いているのかを知ることができるでしょう。
トラス構造とは
トラス構造とは、梁や壁組などに三角形を作る構造を指します。これに対して、四角形の構造を採るものをラーメン構造と呼びます。トラス構造は一般的に細長い部材を組み合わせるのですが、それぞれの接点はピン接合という方法でつながっています。ピン接合というのは、部材同士を一体化させるのではなく、ピンもしくは蝶番のような形でそれぞれの部材が回転、可動する形でつなげる方法です。この接合方法によって、部材に力がかかっても全体がゆがむことなく、外力を効率よく分散させることができます。
トラス構造には、部材の構成要素によってプラットトラス構造、ハウストラス構造、ワーレントラス構造といった種類が存在します。それぞれ異なる場所に使われますが、全体として大型の建造物に用いられる傾向があります。というのも、上記のようにトラス構造は外力に対する耐性が強いため、大きな屋根やドームを作りやすいからです。具体的には、体育館や美術館のようなフロア全体に大きな空間を作る際に多用されます。
トラス構造のメリット
トラス構造は強度が強いため、開放感のある内部構造を作れるというメリットがあります。スペースを有効に活用できますし、すっきりとした印象になり見た目が良くなります。また、細い部材であってもトラス構造を採ることで十分な強度を得られますので、梁などを軽量化できるのもメリットです。より地震に強い構造となりますし、それを支える壁部分もシンプルにすることができます。
こうしたことから、特殊な構造を持つ施設を作るのに適した工法となります。たとえば、屋根が複雑な形をしたアーチ状のものや、高低差を付けたドームなどを作りやすくなります。より設計の幅を広げてくれるというのが、トラス構造の良いところなのです。
トラス構造のデメリット
一方でトラス構造にする場合、部材を組み合わせて三角形を作る必要がありますので、組み立て作業の量が多くなるというデメリットがあります。当然その分工期が長くなってしまいますし、コストが高く付くことも考えられます。細くて軽量の部材で済むため材料費はそれほどではありませんが、やはり作業量の増加に伴う人件費の増加が影響するからです。また、組み合わせる部材は、それぞれのパーツで長さや太さなどが変わってきますので、発注作業も複雑になりがちです。
特徴を理解して向き不向きを見分ける
トラス構造は、部材を組み合わせて三角形を作るスタイルです。ピン接合による組み合わせとなりますので、外力への耐性が強くなります。そのため、大型建築物や複雑な形状をした建物に向いています。一方で、コスト高や高さ制限といった注意点もありますので、向き不向きのある構造とも言えます。